アジサイの不思議にせまるQ&A

アボック社『アジサイ百科』より


1. アジサイは光が好き?嫌い?
アジサイは日陰の植物とか半日陰の植物と云われることがありますが、必ずしも正しくありません。
野生のガクアジサイは日ざしの強い海岸の崖地や磯の海に面した斜面、林の縁に生えている株に多くの花がついています。大きな艶のある葉が強い光を浴びてきらきら光っています。林の中や日陰の崖に生えている株はほとんど花を付けていません。また、日陰の株は光合成が少なく栄養失調のため害虫に対する抵抗力を持つことが出来きず、虫に食われて大きな葉がすべてレースのように孔だらけになっているのを見ます...
2. 秋色アジサイってなに?
秋色アジサイという呼び名を聞くようになったのはいつ頃だったでしょう。著者でさえ初めて名前を聞いた時は、秋色ってどんな色なのか、秋に咲くのか、まったくわかりませんでした。
それは花の盛りが過ぎて、花の色が褪せて穏やかになったり、花の色がくすんだ上にグリーンなど別な色がかぶさったアジサイでした。
秋色アジサイは品種名ではなかったのです...
3. ヤマアジサイの魅力とは?
ヤマアジサイの魅力はなんですか?これは一番難しい質問です。たぶん、まともに答えるのは野暮というものなのでしょう。はまる人は何にでもはまるのですから、理由も理屈もいらないわけです。
野暮を承知で少し書いてみましょう。
私はヤマアジサイの「野趣」と「適度な華やかさ」が好きです。わかったようでわからない答えですが、野にある草木のような雰囲気や、危うくはかない感じや、去年見せなかった色や形の美しさを突然表す気ままさ、といったところでしょうか...
4. 花色は何で決まる?
公園ではアジサイが一列に植えられています。みんな同じ花色ではないですね。土が酸性なら青、アルカリ性ならピンクと聞いたことありませんか。すると花壇の土は場所によって変えてあるのでしょうか?
明月院のアジサイ」としてすっかり有名になったヒメアジサイは濁りのない澄んだブルーの花を咲かせています。
ヨーロッパにこの品種が渡ったとき、ピンクの大きな花が咲いて一躍人気者になったそうです。それで付けられた品種名は‘ロゼア’、「ピンクのバラのように美しい」といった見立でしょうか。この差は日本の土が酸性でヨーロッパの土がアルカリ性だったからです。この場合は常識が正しいことを示しています...
5. 優れた品種を作っているのはどんな人?
日本には園芸アジサイの品種改良に取り組み、個性的で優れた品種を発表している人がたくさんいます。それぞれ、鉢花の生産者、学校の先生、私設の植物園勤務、県立の研究施設と環境は様々ですが品種改良にかける情熱は同じです。
日本で作出された園芸アジサイ西洋アジサイと呼ぶのはこの方々の仕事を否定するようで失礼だと思います...
6. 世界に輝いた日本の品種とは?
日本で品種改良された品種が世界で評価されるのは嬉しいことです。
『フロリアード』は花の国オランダで1962年から10年に1回行われている国際園芸博覧会で、受賞は大変名誉なことです。この博覧会で日本のアジサイがいくつもの賞を獲得しています...
7. アジサイがブランドにならなかったのはなぜ?
江戸時代には多くの植物が一時的な熱狂で大変高価な値で取引されました。植物が投機の対象になり悲喜劇を生んだことはよく知られています。
例えばカラタチバナ、オモト、松葉蘭、長生草(長生蘭)、ナンテンが金生樹と呼ばれて、増殖すれば高く売れると『金生樹譜・万年青』という当時の本に紹介されている(『江戸の花競べ』小笠原左衛門尉亮軒著による)。またイワヒバ、ヤブコウジ、マンリョウ、細辛(カンアオイ)でも同様のことがあったといいます(『日本の花』園芸文化協会監修より)。
ステータスのシンボルのように上流階層の人々に愛好された植物もあります...
8. 中国からヨーロッパに渡った理由は?
日本人は、少なくとも奈良時代の740年~750年頃に、アジサイを庭に植えて花を楽しんでいたことが万葉集からわかります。それ以来、わかっているだけでも1200年以上という、ずいぶんと永いおつきあいです。
万葉集でうたわれたアジサイの花は野生状態のものではなく庭に植えられたものを詠っています。額ブチ咲かテマリ咲かを示す絵などの明確な資料はありませんが、おそらく額ブチ咲だったと思います...
9. 新しい品種はどのように誕生する?
園芸化の第一歩は野生集団の中から優れたものや鑑賞価値の高いものを選抜することから始まります。アジサイの仲間も例外ではないと思います。
野生品を庭に移すには色の良いもの、形の良いものを、と選抜が行われたはずです。もちろん額縁形の花ばかりの中にテマリ形の花を偶然見つけたら大喜びで庭に移したことでしょう。
園芸化は段階的に進みます。無意識の選抜→意識的選抜→積極的探索→実生を育て選抜→人工的交配で実生を育て選抜するというようにです...
10. 仲間を識別する方法は?
ジョウザンアジサイという植物があります。
青い光沢のある実をつけた枝を切り花として輸入しているので見た人もいると思います。これはアジサイの仲間ですよと説明しても、反応は「アジサイに実がなるの、うそー」といったところでしょう...
11. アジサイと間違われる植物は?
「ウツギって赤くて筒形をしている花でしょ。」「それはタニウツギウツギじゃないの。」「変なの、わけわかんない。」
少し園芸に興味のある人とこんな会話を何回かした覚えがあります。また、山にハイキングに行ってヤマアジサイの花を写してきたよと写真を見せられて、「これは大馬鹿め!の木(ムシカリの別名は大葉カメノキ)だよ」と大笑いをしたことも何度かありました。
額ブチ咲の花はアジサイと思ってしまうようです...
12. アマチャって本当に甘い?
甘茶の原料植物がヤマアジサイであり、日本で現在も年に数10トン生産されていることを知っていますか。
4月8日の花祭り(灌仏会)ではお釈迦様の小さな像に甘茶をかけて誕生を祝います。日本でこの行事が行われ始めたのは聖徳太子が仏教を広めようとしていた飛鳥時代です。この時には甘茶ではなく香を溶かした水が使われていました...
13. まだ解かれていない、三つの疑問
多くの植物でDNAの分析が進み、その結果を比較することで種と種の関係が再検討され分類体系が大きく変わりました。現時点での集大成が『植物分類表』(大場秀章編著2009Aboc)となって出版されました。アジサイの仲間は永く使われてきたエングラーの植物分類体系ではユキノシタ科に属していました。しかしDNAの分析結果はアジサイの仲間とユキノシタ科の他のメンバーとは近い関係でないことを示しました。そのためアジサイの仲間はユキノシタ科から分かれて、アジサイ科として独立することになりました...
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